公的支援から民間財団まで、知っておきたい制度を一挙紹介

介護施設の経営を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。物価高騰、人材不足、設備の老朽化——これらの課題を自力で解決しようとすれば、財務負担は相当なものになります。しかし、国・都道府県・民間財団が用意する補助金・助成金を上手に活用すれば、初期費用を大幅に圧縮しながら施設のDXや環境改善を進めることができます。 本記事では、介護施設が活用できる補助金・助成金を「公的制度」と「民間財団」に分けて整理し、対象、補助率、おおよその募集時期をわかりやすく解説します。
ご注意:補助金情報は年度ごとに内容が変わります。申請前には必ず各実施機関の公式情報をご確認ください。交付決定前の発注・購入は補助対象外となるケースがほとんどです。

目次

  1. 公的補助金・助成金
  2. 民間財団の助成金
  3. 補助金活用のポイント

1. 公的補助金・助成金


① 介護テクノロジー導入支援事業(ICT補助金)

実施主体:各都道府県(財源:地域医療介護総合確保基金) 介護現場のDXを後押しする、業界でもっとも活用されている補助金です。令和7年度から「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が一本化され、「介護テクノロジー導入支援事業」として再編されました。

対象機器

  • 見守り機器(ベッドセンサー、カメラ型、マット型など)
  • 介護記録ソフト(業務支援ソフト、バックオフィスソフト)
  • インカム
  • 移乗支援ロボット・入浴支援機器
  • Wi-Fi環境整備費用、定着支援費用なども含む

補助率・補助上限額

区分 補助上限額 補助率
介護テクノロジー(1台) 上限30万円/台 1/2〜4/5
介護ソフト(介護業務支援) 職員数により100万〜250万円 1/2〜4/5
パッケージ型導入(複数機器セット) 400万〜1,000万円(事業所規模による) 1/2〜4/5
令和8年度は補助率が最大4/5に引き上げられました。見守り機器・介護ソフト・インカムの3点は業務時間削減効果が確認されているとして特に重点支援されています。

対象施設

介護老人福祉施設(特養)、老健、介護医療院、グループホーム、通所介護、訪問介護など介護保険サービス事業所全般

募集時期

都道府県ごとに異なりますが、概ね4〜8月頃に公募開始。令和8年度はすでに多くの都道府県で受付が始まっています(2026年6月現在)。
公式情報:各都道府県の高齢福祉担当課へ問い合わせるか、厚生労働省の「介護現場の生産性向上ポータルサイト」を確認してください。

② エイジフレンドリー補助金(高年齢労働者の安全衛生確保対策補助金)

実施主体:厚生労働省 60歳以上の高年齢労働者が安全に働けるよう、中小事業者の職場環境改善を支援する制度です。介護施設は高年齢スタッフが多く活躍するため、非常に相性がよい補助金です。令和8年度は予算額が前年比約25%増の9.5億円に拡充されました。

対象事業者

  • 労災保険適用の中小企業事業者
  • 役員を除き、60歳以上の労働者が常時1名以上就労していること

コース別の補助内容(令和8年度)

コース 内容 補助率 上限額
専門家総合対策コース 専門家によるリスクアセスメント、転倒防止・腰痛予防設備の導入、運動指導など 1/2〜4/5 100万円
熱中症対策コース 暑熱環境における熱中症予防装置・設備の導入 1/2 100万円
コラボヘルスコース 保険者と連携した健康保持増進の取り組み(メンタルヘルス対策、健診情報活用など) 3/4 30万円
介護施設では、リフト・アシストスーツ、床材の滑り止め、手すりの設置、照明改善などが対象になります。

募集時期

令和8年度:2026年5月20日〜10月31日(専門家総合対策コースの第1段階は8月31日まで)
予算に達した時点で受付終了となるため、早期の申請が重要です。

③ 介護従事者処遇改善支援

実施主体:厚生労働省 介護職員の賃上げを支援する制度で、令和7年12月から令和8年5月を対象期間とするつなぎ措置として実施されています(令和8年6月施行予定の介護報酬改定まで)。

支援内容

  • 基本支援:ケアマネジャーや看護職員を含む全介護従事者に月額1万円
  • 生産性向上に取り組む事業者:介護職員に月額5,000円を加算
  • 職場環境改善に取り組む事業者:介護職員1人あたり月額4,000円を加算
条件を満たせば介護職員1人あたり最大月額1万9,000円の賃上げが可能です。これまで処遇改善加算の対象外だったケアマネジャーや看護職員も対象となります。

④ 業務改善助成金

実施主体:厚生労働省 事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、かつ生産性向上のための設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。

対象

中小企業・小規模事業者(業種によって規模基準が異なる)

主な要件

  • 事業場内最低賃金を最低50円以上引き上げること(引き上げ額に応じて助成上限が変わる)
  • 設備投資等の費用助成の対象となる労働者は、雇用保険被保険者であることが必須

補助率・助成額

  • 助成率:事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は4/5、1,050円以上の場合は3/4
  • 助成額:30万円〜600万円(賃金引き上げ額と設備投資内容による)
介護ソフト、送迎車、業務効率化機器など幅広い設備投資に活用できます。

募集時期

令和8年度の交付申請受付開始:2026年9月1日(年度ごとに設定)

⑤ 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金

実施主体:厚生労働省(都道府県・市町村を通じて交付) 介護施設の防災・減災対策や環境整備に対する交付金です。令和8年度の当初予算は12億円、令和7年度補正予算は83億円で、近年の建設コスト上昇を踏まえた補助基準単価の見直しも行われています。

主な対象事業

  • 小規模高齢者施設のスプリンクラー設備整備
  • 認知症高齢者グループホーム等の防災改修
  • 非常用自家発電・給水設備の整備
  • 水害対策に伴う改修、耐震化工事

募集時期

都道府県ごとに異なります。年度初め(4〜5月)の情報収集が特に重要ですが、補正予算分として年度後半(12月前後)に追加募集が行われることもあります。

⑥ IT導入補助金・デジタル化AI導入補助金

実施主体:経済産業省・中小企業庁 / 中小企業基盤整備機構 介護事業所も中小企業として、経産省系のIT導入補助金を活用できます。

対象事業者の要件

医療法人・社会福祉法人については、常時使用する従業員の数が300人以下であることが中小企業者としての要件となります。
制度名 上限額 補助率 募集時期
デジタル化・AI導入補助金2026 450万円 1/2〜2/3 2026年3〜8月
小規模事業者持続化補助金(通常枠) 50万円 2/3 2026年11〜12月
介護ソフトやバックオフィスシステムの導入に活用できます。ただし、介護テクノロジー導入支援事業との重複申請はできないため注意が必要です。

2. 民間財団の助成金

公的補助金と異なり、民間財団の助成金は「国や自治体の補助が見込めない案件」を対象とするものが多い点が特徴です。車両購入・備品購入・施設改修など、公的制度では対象になりにくいものをカバーしてくれます。

① JKA(競輪・オートレース)補助事業「福祉機器の整備」

実施主体:公益財団法人JKA 競輪・オートレースの売上の一部を財源に、社会貢献事業として実施されています。介護施設への福祉機器導入補助として、民間助成の中でも特に規模が大きく活用しやすい制度です。

対象法人

社会福祉法人、NPO法人、財団法人、社団法人など

対象機器

  • 特殊浴槽
  • 見守り支援システム(ナースコールを除く)
  • 介護ロボット(移乗介助、移動支援)
  • 介護リフト
  • モジュール型車いす

補助内容

  • 補助率:3/4
  • 上限額:500万円
  • 事業費総額が100万円以上であること
  • 直近2年間に同財団から福祉機器の補助を受けた法人は対象外

募集時期(令和8年度)

  • 第1回:2025年9月16日〜11月14日(締切済)
  • 第2回:2026年5月25日〜6月19日(受付終了)
補助率3/4という手厚さから申請が集中します。年2回の募集があるため、逃した場合でも次回を狙えます。

② 日本郵便 年賀寄付金配分事業

実施主体:日本郵便株式会社 お年玉付き年賀はがきなどの売上から徴収した寄付金を、社会貢献活動を行う団体に配分する制度です。1949年から続く歴史ある制度で、福祉分野の活動にも広く使われています。

対象団体

社会福祉法人、NPO法人、一般財団・社団法人、公益法人など

対象活動・用途

  • 高齢者・障害者への生活支援サービス
  • 備品・車両の購入
  • 施設改修工事
  • 地域コミュニティ活動など
公的補助が見込めない活動を対象としており、備品や軽微な設備導入に使いやすい制度です。

募集時期

例年9〜11月頃に翌年度分の公募を実施。令和8年度分は2025年9月10日〜11月7日に受付が行われました。
最新情報:日本郵便「年賀寄付金による社会貢献事業助成」ページを確認してください。

③ 丸紅基金 社会福祉助成金

実施主体:社会福祉法人丸紅基金 丸紅株式会社の出捐により1974年に設立された民間助成機関です。1975年より毎年全国の社会福祉活動を支援しており、2024年度までの累計助成額は約55億円以上にのぼります。

対象団体

社会福祉法人・NPO法人などの非営利法人(法人でない場合は3年以上の活動実績が必要)

助成対象(用途)

車両・備品・機器の購入、施設改修工事、イベント・講座の開催、調査研究・出版など

助成額

  • 1件あたり上限300万円(1万円単位)
  • 助成総額:年間最大3億円

注意点

  • 国や地方公共団体の公的補助が見込める案件は対象外
  • 同一団体からの申込は1件のみ
  • 直近3年度以内に助成を受けた団体は優先度が下がる

令和8年度(第52回)

  • 募集期間:2026年5月1日〜6月30日
  • 申込はWEBのみ(郵送・FAX不可)

④ 日本財団 助成事業

実施主体:公益財団法人日本財団 笹川良一氏が設立し、競艇(ボートレース)の収益を財源とする日本最大規模の民間財団のひとつです。「行政の手の届きにくい福祉分野」を優先的に支援しており、介護・障害福祉・地域コミュニティ活動などが対象になります。

対象団体

NPO法人、社会福祉法人、一般財団・社団法人など

募集時期

例年10月頃に翌年度(4月〜翌3月)の事業を公募。審査を経て2〜3月に採否決定
令和8年度事業の募集は2025年10月に行われ、受付は既に終了しています。次回(令和9年度分)の公募は2026年10月頃の予定です。

申請窓口

日本財団「助成ポータル」からオンライン申請(https://www.nippon-foundation.or.jp/grant_application

福祉車両助成事業(別途募集)

日本財団では、通常の助成事業とは別に「福祉車両配備助成事業」を実施しています。1994年度から累計4万台を超える車両を支援してきた実績ある制度です。 対象団体:社会福祉法人、NPO法人、公益財団・社団法人、一般財団・社団法人(非営利性が徹底された法人に限る) 対象事業
  • 介護保険法・障害者総合支援法・児童福祉法に基づく高齢者や障害児者の通所サービス
  • 道路運送法に基づく移送サービス事業
  • 自治体単独事業のうち、利用者の通所・移動を目的とした事業
対象車両:車いす対応車・送迎車(新車のみ。中古・新古車は対象外)。同一法人からの申請は1車種1台まで。 募集時期:例年7月頃に公募(審査結果は12月上旬頃)。通常の助成事業(10月募集)では車いす対応車・送迎車は対象外となるため、車両導入を検討する場合はこちらの専用募集を狙うのが確実です。

3. 補助金活用のポイント

① 「交付決定前に動かない」が鉄則

補助金の最重要ルールは、交付決定が下りる前に発注・購入・契約を行ってはならないことです。よかれと思って先に動いてしまうと、補助対象から除外されます。申請書を出してから約1〜2か月で交付決定が届くことが多いため、スケジュールに余裕を持って準備を進めましょう。

② 公的補助と民間助成の「重複制限」に注意

多くの民間助成(丸紅基金、年賀寄付金など)は「同一案件に対して公的補助が見込める場合は対象外」という条件がついています。逆に言えば、公的補助の対象にならない備品購入や軽微な改修には、民間助成を狙うのが有効です。

③ 4〜5月は情報収集の最重要期間

都道府県が実施する介護テクノロジー補助金など、年度初めに一斉に公募が始まる制度が多くあります。予算に達すると早期に締め切られることもあるため、4月〜5月の情報収集が特に重要です。

④ 民間助成は「小規模団体優先」の傾向がある

丸紅基金をはじめ、多くの民間財団は「大規模団体より小規模団体を優先する」という選考方針を明記しています。申請書には数値目標や具体的な導入効果を丁寧に記載することが採択のカギになります。

⑤ 自治体独自の補助金も見逃さない

国・都道府県のほかに、市区町村が独自に介護事業所向けの補助金を設けているケースがあります。物価高騰対策、ICT導入支援、人材確保支援など、地域によって内容はさまざまです。施設所在地の福祉担当部署のホームページを定期的にチェックしましょう。

まとめ

補助金・助成金の種類は多岐にわたりますが、大きく「設備導入系(ICT・ロボット)」「人材・処遇改善系」「施設整備・防災系」「職員の安全対策系」に整理して考えると、自施設の課題に合った制度を見つけやすくなります。 また、公的補助と民間助成を組み合わせることで、それぞれの対象外となる費目を補い合うことも可能です。補助金活用を「攻めの投資ツール」として捉え、ICT導入や環境改善を計画的に進めることが、持続可能な介護経営への近道となります。
本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。申請にあたっては必ず各実施機関の最新の公募要領をご確認ください。

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