デイサービスのDX・ICT業務改善、何から始めればいい?現場が動き出す「最初の一歩」

目次

1.なぜ今、デイサービスにDX・ICTが必要なのか

少子高齢化が加速する日本では、介護の需要が増え続ける一方で、担い手となる働き手の数は減り続けています。厚生労働省の試算によると、2040年度には介護人材が全国で約57万人不足すると見込まれており、現場の切迫感は年々高まっています。

デイサービス(通所介護)はその最前線です。送迎・入浴・食事・機能訓練・記録・申し送り…。利用者が来所している間、職員は次々に業務をこなしながら、隙間に紙の記録を書き、帰所後に入力作業が積み重なる。「ケアに集中したいのに時間がない」という声は、全国の現場で共通しています。

こうした状況を受け、国も積極的に動いています。厚生労働省は補助金制度を設けるなどして介護事業所がICTを導入しやすい環境を整備し、2026年4月からは介護情報基盤の全国展開も予定されています。ICT活用はもはや「先進的な取り組み」ではなく、すべての事業所が向き合うべき課題になりました。

2.「何から始めるか」が分からない理由

DXやICTという言葉は耳にするようになったものの、多くの現場が「どこから手をつければよいか分からない」という状態に陥っています。その背景にはいくつかの構造的な理由があります。

①課題が「見えていない」

介護現場では、長年慣れ親しんだやり方が「当たり前」になっています。「記録に1時間かかるのはしょうがない」「申し送りはもともとこういうもの」という感覚が定着すると、そもそもどこが改善できるか気づきにくくなります。

②「一点突破」で終わっている

介護ソフトは入れた。でも、他の業務との連携がなく、結局は手書きのメモと並行して使っている──これは非常によく見られるパターンです。ICT機器の導入率は上がっているものの、「記録入力だけ電子化」といった点の取り組みで終わり、業務全体の効率化には至っていないケースが多いと指摘されています

③職員の不安と変化への抵抗

「自分はデジタルが苦手で…」という職員は少なくありません。DXに成功している事業所の共通点として、スタッフが新しいツールに慣れるまでサポート体制をしっかり整えたことが挙げられています。技術の問題ではなく、組織としての段取りの問題です。

3.実践事例

事例1:ICT導入で月262時間削減した通所介護の取り組み

このような事例が示すのは、「ICT化は確かに初期のハードルがある。でもそれを乗り越えた先には、現場が変わる景色がある」ということです。記録業務が1日1時間かかっていたのが15分に短縮された事業所、請求作業が3日から実質1〜2時間に圧縮された事業所も報告されています。

事例2:過疎地の複数デイサービスが実現した「共同送迎」の新しい形

デイサービスにとって送迎は、最もコストと時間がかかる業務のひとつです。特に中山間地域や過疎地では、利用者の自宅が広範囲に散らばっており、送迎のために職員1人・車1台が長時間拘束されることも珍しくありません。そこに今、大きな転換期が訪れています。

共同送迎をITで管理するには、送迎ルートの最適化ソフトや、リアルタイムで位置情報を共有できるシステムの活用が有効です。近隣の事業所と連携して共同導入することで、コストの分担も可能になります。

「同業他社は競合」という感覚があるかもしれません。しかし人材も車も不足する過疎地において、地域のデイサービス全体が持続できなければ、利用者も、職員も、地域も困ります。厚労省が「協働化・大規模化による経営改善」を政策パッケージとして推進している背景には、こうした現実があります。

4.デイサービスのDX・ICT業務改善5つのステップ

①現場の「診断」—まずアンケートで実態を把握する

職員全員の声を集めることが出発点です。「なんとなく忙しい」を「どの業務が・どれだけ・なぜ詰まっているか」に変換します。記名だと言いにくいことも出てくるため、匿名アンケートが効果的です。業務時間の配分(直接ケア・記録・会議・送迎・その他)を数値で把握することも重要です。

②課題の優先順位を決める

アンケートの結果をもとに、「最も大きな課題はどこか」を経営者・管理者・現場リーダーで話し合います。厚労省ガイドラインの7領域を参照し、「うちは記録業務が最大のボトルネック」「送迎の非効率が一番痛い」など、優先テーマを絞り込みます。

③小さなスタートで一つを改善する

最初から全部を変えようとしない。まず一つのツール・一つの業務から始め、「これは使える」という体験を職員全員で共有します。介護ソフトの記録機能、タブレットでのバイタル入力、インカムでの申し送り効率化など、小さな成功が次のステップへの推進力になります。

④職員が使いこなせるサポート体制を整える

「機器を入れたが使われていない」という失敗の多くは、導入後のサポートが不十分だったことが原因です。ICTが苦手な職員には1対1で教える時間を設ける、使い方マニュアルを写真入りで作成するなど、丁寧な定着支援が成否を分けます。

⑤効果を測定し、PDCAを回す

「導入前・導入後で記録時間は何分変わったか」「職員満足度はどう変化したか」を定量・定性両面で評価します。2024年度の介護報酬改定で設置が義務化された生産性向上委員会の活動と連動させると、加算の取得にもつながります。

5.まず「現場の診断」から始めよう

スクリーンショット 2026-05-27 114329

DX・ICTによる業務改善において、最初にやるべきことは「ツールを探すこと」ではありません。「自分たちの事業所の実態を診断すること」です。

忙しい日常の中では、何が問題かが見えにくくなっています。職員一人ひとりが「うちの現場はここが課題だ」と感じていることを言葉にし、数字にし、組織全体で共有する。その診断があって初めて、「どのICTツールを・どの順番で・何の目的で導入するか」が決まります。

CareSTA(DX医療介護ナビ)では、デイサービス職員が自分の現場を診断するための「生産性向上のためのアンケート デイサービス版」をご用意しています。厚労省ガイドラインの7つの領域に対応した設問で、5段階評価と業務時間の記録欄を組み合わせた診断ツールです。全職員にそのまま印刷して配布できる複数ページ構成になっています。

管理者がトップダウンで方針を決めるのではなく、現場の全職員にアンケートを配布して回収・集計することで、「うちが一番力を入れるべき領域」が浮き彫りになります。それが、DXへの「最初の一歩」です。

「介護生産性向上アンケート打ち手別 デイサービス版」のダウンロードには、ログインが必要です。

まだ登録がお済みでない方は、こちら

DX医療介護ナビに会員登録後、PDFをすぐにダウンロードできます

 

関連記事

article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

①課題が「見えていない」

介護現場では、長年慣れ親しんだやり方が「当たり前」になっています。「記録に1時間かかるのはしょうがない」「申し送りはもともとこういうもの」という感覚が定着すると、そもそもどこが改善できるか気づきにくくなります。

②「一点突破」で終わっている

介護ソフトは入れた。でも、他の業務との連携がなく、結局は手書きのメモと並行して使っている──これは非常によく見られるパターンです。ICT機器の導入率は上がっているものの、「記録入力だけ電子化」といった点の取り組みで終わり、業務全体の効率化には至っていないケースが多いと指摘されています。

③職員の不安と変化への抵抗

「自分はデジタルが苦手で…」という職員は少なくありません。DXに成功している事業所の共通点として、スタッフが新しいツールに慣れるまでサポート体制をしっかり整えたことが挙げられています。技術の問題ではなく、組織としての段取りの問題です。

関連記事

article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail
article-thumbnail