【ひな型付き】令和8年度「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」の解説と導入検討したいICT機器

2024年4月に始まった医師の働き方改革を背景に、病院には、限られた人員でも質の高い医療を維持できる体制づくりが強く求められています。こうした状況を踏まえ、厚生労働省が令和8年度に実施するのが「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」です。

目次

事業の概要

この事業は、ICT機器等の導入を通じて業務効率化と職場環境改善を進め、生産性向上を図る病院に対し、必要な経費を支援するものです。

対象となるのは、令和8年4月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている医療機関です。

 

補助の内容は、以下になります。

・補助率は対象経費の5分の4

・補助上限額は1施設あたり8,000万円

・職員間の情報共有に使うスマートフォンや業務用インカム、見守り支援機器、生成AIを活用した業務支援サービス、搬送ロボットなどの導入

 

に加え、それらに附随する設置費、訓練費、効果測定費、Wi‑Fi環境整備費用、電子カルテ等とのシステム連携費用も対象になり得ます。

 

ただし、電子カルテ本体の導入・更新費や運用保守などのランニングコストは対象外であり、申請すれば必ず採択されるものでもありません。

また病院は申請書とあわせて「業務効率化計画」を都道府県に提出し、その内容を踏まえて国が選定を行う仕組みであるため、本事業を活用するには、単なる機器購入ではなく、自院の課題に即したDX計画として整理することが重要です。

業務効率化計画ひな型 なぜ今、病院DXは「機器導入」だけでは足りないのか

病院DXのご相談で多いのは、「便利な機器を入れたのに、現場でうまく回らない」という課題です。その背景には、端末やソフトの問題だけでなく、通信環境、システム連携、運用設計、教育体制といった土台の不足があります。

たとえば、リアルタイムの見守り通知やモバイル活用、音声入力、画像共有などを組み合わせる場合、既存環境のままでは帯域や接続安定性、認証方式、端末管理の面で問題が生じることがあります。

今回の事業では、ICT機器等の導入に附随する費用として、Wi‑Fi環境整備費用や電子カルテ等とのシステム連携費用も対象になり得るため、「機器だけ入れて終わり」ではない、実運用を見据えたDX設計が重要になります。

一方で、補助金の考え方には注意点もあります。あくまで、業務効率化に資するICT機器の導入と、それに必要な附随費用が中心です。つまり、病院DXを成功させるには、「何を買うか」だけでなく、どの業務課題を、どの運用フローで、どの機器構成で改善するかを整理することが欠かせません。

この補助事業で検討したい、病院DXの代表的な導入機器

厚生労働省の実施要綱では、職員間の情報共有のためのスマートフォンや業務用インカム、患者の見守り支援機器、生成AIを活用した各種業務支援サービス、薬剤・検体搬送ロボットなどが例示されています。

 

実際の導入計画では、病院の課題に応じて、以下のような機器・仕組みを組み合わせて検討するのが現実的です。なお、個別製品や構成によって補助対象該当性は変わり得るため、申請前の確認が前提となります。

スマートフォン連携インカム・院内モバイルコミュニケーション

PHS更新のタイミングでまず検討したいのが、スマートフォン連携インカムや院内コミュニケーション基盤の見直しです。スタッフ同士の一斉連絡、グループ通話、セキュアチャット、写真共有などを一体化できれば、急変時の連携や医師・看護師・コメディカル間の情報伝達をよりスムーズにできます。厚生労働省の要綱でも、職員間の情報共有のためのスマートフォンや業務用インカムは例示されています。

AI議事録・音声入力・文書作成支援

記録業務の見直しは、病院DXの中でも効果を感じやすい領域です。診察、カンファレンス、申し送り、各種記録の場面で、AI議事録、音声入力、文書自動作成支援を活用すれば、記録作成にかかる時間短縮や転記負担の軽減が期待できます。実施要綱では、生成AIを活用した各種業務支援サービス(AI問診や文書自動作成支援等)が例示されています。音声入力や議事録作成も、業務支援の一環として構成可能性がありますが、具体的な対象性はシステム構成や用途ごとに確認するのが安全です。

高性能見守り機器・バイタル連携・離床検知

病棟の安全性向上とスタッフ負担軽減を両立したい場合、見守り支援機器、離床センサー、バイタル自動入力機器などは有力な選択肢です。ナースコールが鳴ってから動く体制だけでなく、転倒リスクや離床兆候を早めに把握できる体制をつくることで、夜間巡視や対応負荷の見直しにつながります。要綱では患者の見守り支援機器が例示されており、Q&Aでも、バイタル自動入力機器等の導入に伴う電子カルテ連携のためのシステム改修費用が対象になり得ることが示されています。

自律走行型配送ロボット(AMR)・搬送ロボット

看護師やスタッフが本来業務以外の搬送業務に時間を取られている病院では、薬剤・検体・物品搬送の自動化はDX効果が出やすいテーマです。厚生労働省の実施要綱およびQ&Aでも、薬剤・検体搬送ロボットは補助対象となり得る例として示されています。病院のレイアウトやエレベーター連携、運用時間帯、搬送ルールまで含めて設計することで、搬送業務の省力化だけでなく、スタッフの動線最適化にもつながります。

位置情報管理・資産管理の見える化

輸液ポンプ、シリンジポンプ、車椅子、ストレッチャー、モバイル端末など、病院内で「探す時間」が積み重なると、想像以上に現場負担になります。こうした課題に対しては、RFIDやタグを用いた位置情報管理・資産管理システムの導入を検討する余地があります。これは実施要綱の明示例ではありませんが、病院の業務効率化に資するICT構成の一部として整理できる可能性があります。補助対象になるかどうかは、導入目的やシステム全体の設計、都道府県の運用確認を踏まえて個別に判断するのが望ましい領域です。

サイバーセキュリティを意識したネットワーク整備

病院DXが進むほど、通信基盤の安定性とセキュリティは不可欠になります。見守り、モバイル端末、クラウド連携、AI支援などを複合的に運用するには、ネットワークの設計・分離・認証・端末管理まで含めた環境整備が必要です。今回の事業では、ICT機器導入に附随する費用として、Wi‑Fi環境整備費用やシステム連携費用が対象になり得ます。なお、単独のセキュリティ投資がそのまま補助対象になると断定するのではなく、業務効率化に資するICT導入の一部としてどう位置づけるかが重要です。

病院DXは「単品導入」より「課題起点の組み合わせ」が重要です

現場で本当に成果が出るDXは、1台の機器で劇的に変わるものではなく、複数の課題をつないで改善する設計から生まれます。たとえば、「連絡が遅い」という課題だけを見るのではなく、「情報共有」「見守り通知」「記録入力」「電子カルテ連携」「端末管理」まで一連の流れで設計することで、初めて業務負荷の軽減と定着が両立します。厚生労働省の制度でも、最大3年間を対象とする業務効率化計画の作成が求められており、単発導入ではなく、中長期での改善を見据えた整理が前提となっています。 

 

この点で重要なのは、機器選定より先に、自院の問題を見極めることです。ナースステーションに業務が集中しているのか、搬送が非効率なのか、記録に時間を取られているのか、通信基盤が足りないのか。課題の優先順位を整理し、それに合わせて機器・ネットワーク・システム連携・運用ルールを組み合わせることで、補助金を活用した投資効果が見えやすくなります。

申請のポイントは「業務効率化計画」の質にあります

この事業は、申請すれば必ず交付されるものではありません。厚生労働省は、都道府県ごとの所要見込額の範囲内で対象医療機関を選定します。病院側は、申請書とあわせて業務効率化計画を提出し、どのような課題があり、どのICT機器等を活用し、どのように業務改善や職場環境改善につなげるのかを示す必要があります。

 

また、原則として、補助対象病院の決定以降に実施した導入費用等が対象であり、令和7年度中に導入した機器等は対象外です。さらに、業務効率化計画は最大3年間を見据えたものであっても、2年目・3年目の補助が保証されるわけではありません。だからこそ、初年度で何を優先導入し、どこまで成果を出すのかを現実的に設計することが大切です。

病院DX導入は、現状把握から定着支援までが重要です

病院DXは、機器を導入しただけで成果が出るものではありません。現場で実際に使われ、業務効率化や職場環境改善につながるためには、課題整理、構成設計、導入準備、運用定着までを一連の流れで進めることが重要です。特に今回の支援事業では、申請時に業務効率化計画の提出が求められるため、導入機器の選定だけでなく、「なぜ必要なのか」「どの業務がどう改善するのか」を整理した上で進める必要があります。

  1. 現状診断
    院内連絡、記録、見守り、搬送、通信環境などの課題を整理
  2. 構成検討
    スマートフォン連携インカム、AI記録支援、見守り機器、搬送ロボット、Wi‑Fi整備などを組み合わせて検討
  3. 概算整理
    補助対象となり得る費用と対象外費用を切り分け、優先順位を設定
  4. 計画書支援
    業務効率化計画の作成を支援し、導入目的と改善効果を明確化
  5. 導入・初期設定
    ネットワーク、端末、システム連携、運用ルールを整備
  6. 定着支援
    教育、効果測定、運用改善まで継続支援

こうした一連の流れを、病院ごとの課題や体制に合わせて無理なく進めていくためには、機器選定だけでなく、現場運用まで見据えた伴走支援が重要です。

当社がご支援できること

当社では、病院DXを「機器販売」ではなく、現場課題の整理から、構成検討、導入設計、定着支援まで含めた実装支援としてご提案しています。スマートフォン連携インカム、AI活用による記録支援、見守り機器、搬送ロボット、ネットワーク整備など、個別の製品提案だけでなく、「どの順番で導入すべきか」「どこまでを今年度計画に入れるべきか」「現場負担をどう抑えるか」といった観点から、無理のないDX計画づくりをサポートします。

 

補助金の活用を前提とする場合は、対象要件の確認、導入候補の整理、附随費用の考え方、計画書に落とし込むべき改善ストーリーの設計まで、早めに準備を進めることが重要です。病院ごとに、通信環境、既存システム、職員体制、重点課題は異なります。だからこそ、テンプレート的な提案ではなく、自院に合ったDXパッケージが必要です。

まずは、現状把握から始めませんか

病院DXを成功させる第一歩は、最新機器を探すことではなく、今の現場で何が止まっているかを見える化することです。


「院内連絡をもっと早くしたい」

「記録業務を減らしたい」

「見守りと安全性を両立したい」

「搬送業務を効率化したい」

「Wi‑Fiや連携基盤を整えたい」


こうした課題がある病院様は、今が見直しのタイミングです。

 

補助制度を活用しながら、現場に定着するDXを進めるために、まずは現在の通信環境、業務フロー、導入優先順位の整理からご相談ください。令和8年度の支援事業を見据え、実行可能な病院DX計画づくりをご一緒します。