目次
はじめに:「デジタル中核人材」って何?
近年、介護現場の生産性向上施策において、「デジタル中核人材」という言葉が頻繁に使われるようになりました。
さらに、厚生労働省の令和8年度概算要求資料においては、大型の設備導入補助金(パッケージ型)の要件として、この研修の受講が明記されるなど、その重要性は急速に高まっています。
本記事では、厚生労働省の手引きや最新の資料に基づき、「デジタル中核人材」の定義、研修の全カリキュラム、そしてなぜ今この人材育成が必須とされているのかについて、詳しく解説します。
この研修が必須となる補助金の最新動向については、こちらの記事で解説しています。
1. そもそも「デジタル中核人材」とは?
「IT担当」ではなく「変革のリーダー」です。
誤解されがちですが、「デジタル中核人材」とは、単にパソコンの修理やWi-Fiの設定ができる職員のことではありません。
厚生労働省の手引きでは、この人材を以下のように定義しています。
デジタル中核人材の定義:介護現場における生産性向上を推進するために、主に介護ロボット及び介護分野で活用するICTなどの介護テクノロジー導入の中核的役割を担う人材 。 施設の運営方針を理解し、現場の意見を取りまとめながら、テクノロジー活用をマネジメントする人材です 。
求められる3つのスキルセット
研修では、以下の3つのスキル習得を目指します 。
- 課題解決スキル: 現場の課題を捉え、解決への道筋を描き、計画に落とし込む能力。
- ファシリテーション・リーダーシップ: チームをまとめ、心理的安全性の高い環境を作り、変革への合意形成を図る能力。
- プロセスマネジメントスキル: 取組の進捗を管理し、PDCAサイクルを回して成果を分析する能力。
つまり、求められているのはITスキル以上に、「現場の課題を整理し、職員を巻き込んで業務改善を指揮するリーダーシップ」なのです。
- これまで:業者に言われるがまま機器を導入し、現場が混乱する。
- これから: デジタル中核人材が「うちの課題解決にはこの機器が必要だ」と判断し、運用定着までを主導する。
2. なぜ今、国はこの研修を求めているのか?
なぜ今、急いでこの研修を受ける必要があるのでしょうか?
その答えは、厚生労働省が出している「令和8年度概算要求」の資料にハッキリと示されています。
令和8年度補助金における「受講要件化」
最大の理由は、国の補助金政策の方針転換です。 厚生労働省の「令和8年度概算要求」資料(地域医療介護総合確保基金)において、介護テクノロジー導入支援事業(パッケージ型導入)の共通要件として、以下の記述が明記されました。
【共通要件】 ・従業員がデジタル中核人材養成研修を受講していること
これまでは機器導入計画があれば申請できる補助金が多くありましたが、今後は「研修を受けた人材(使いこなせるリーダー)がいること」が、補助金活用の必須条件となる可能性が高まっています。これは、機器導入後の「定着」と「実質的な効果」を国が重視し始めたことを意味します。
今後、「研修未受講だと、欲しい補助金がもらえない」という時代が到来することは確実です。
3. 研修カリキュラムの全貌(標準モデル)
本研修の最大の特徴は、座学だけでなく、「自職場での実践(宿題)」が組み込まれている点です。研修期間は約2〜3ヶ月にわたり、インプットとアウトプットを繰り返します 。
【Step 0】事前学習(オンデマンド動画)
集合研修の前に、基礎知識を動画で学習します 。
- 内容: 厚生労働省のセミナー動画視聴(約55分)に加え、オンデマンド動画(倫理、介護過程、テクノロジー基礎など約85分)を受講します。
【Step 1】集合研修 1日目:業務改善と課題の可視化
初日は、テクノロジーを入れる「前段階」の整理手法を学びます 。
- 生産性向上ガイドラインの理解: 業務改善のプロセスを理解する 。
- 問題発見と解決スキル: ケーススタディを通じ、「業務の洗い出し」や「課題の見える化」の手法を学ぶ 。
- タイムスタディ調査手法: 業務時間を定量的に計測・分析する手法を習得する 。
【Step 2】自職場での実践 ①(約4週間)
研修で学んだことを持ち帰り、現場で実践します 。
- プロジェクトチームの立ち上げ: 施設内で業務改善委員会などを組織する 。
- 業務分析の実施: 実際に自施設の業務課題を分析し、「改善方針シート」を作成する 。
【Step 3】集合研修 2日目:導入計画の策定
分析した課題に対し、テクノロジーをどう当てはめるかを学びます 。
- 実践の共有: 宿題で行った業務分析の結果をグループで共有・検討する 。
- テクノロジーの理解: 見守りセンサー、インカム、移乗支援機器などの特性と導入ポイントを学ぶ 。
- 導入計画書の作成演習: 仮想事例を用い、具体的な導入スケジュールや体制図を作成する 。
- リーダーシップ: 変革に対する現場の抵抗を乗り越えるための、心理的安全性やコーチングを学ぶ 。
研修では、実際にSlackやLINE WORKSといったビジネスチャットツールを用いた連絡網の構築や、Googleスプレッドシートを使った共同編集作業など、明日から現場で使えるツールの操作も体験します。
【Step 4】自職場での実践 ②(約4週間)
- 導入計画書の作成: 自施設の課題解決に向けた、現実的な「介護テクノロジー導入計画書」を作成する 。メーカー選定やコスト試算も含みます
【Step 5】集合研修 3日目:ケアの質向上と定着
- 動機づけの手法: デジタル化に後ろ向きな職員をどう説得するか、ロールプレイング等で学ぶ 。
- 個別ケアへの活用: センサー等から得られるデータ(睡眠、排泄ログ等)と、利用者の生活背景(質的データ)を組み合わせ、ケアプランを見直す手法を学ぶ 。
- 倫理的配慮: プライバシー保護や利用者の意思決定支援について学ぶ 。
【Step 6】確認テスト・修了
全日程終了後、オンラインでの確認テストに合格することで修了となります 。
研修が終わる頃には、自施設のDX計画の「下地」が出来上がっている状態を目指すプログラムなのです。
4. 施設管理者が留意すべきポイント
この研修は、受講者が「ただ話を聞いて終わり」になるものではありません。研修の効果を最大化し、実際にデジタル中核人材として活躍してもらうためには、組織側のバックアップが不可欠です。
- 業務としての位置づけ: 受講者は、研修期間中に「委員会活動」や「データ収集」などの宿題を行う必要があります。これを個人の持ち帰り残業にせず、業務時間内で取り組めるよう調整が必要です。
- 経営層の関与: テクノロジー導入は、現場の業務フロー変更を伴います。デジタル中核人材が孤立しないよう、施設長や管理者が「組織として変わる」というメッセージを発信し続けることが重要です 。
- チーム制の推奨: 可能であれば、一人だけでなく複数名、あるいは推進チームとしてバックアップ体制を作ることで、研修で作成した「導入計画」が絵に描いた餅になるのを防げます 。
5. 「資格を取って終わり」にしないために
研修の中身を知り尽くしたパートナーが必要です
デジタル中核人材養成研修は、あくまで「武器の使い方」を学ぶ場です。それを自施設の現場でどう使うは、また別のノウハウが必要です。
当社は全国の都道府県で設置されている介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)のアドバイザーやデジタル中核人材養成研修で講師を務めています。
だからこそ、私たちは研修のカリキュラム内容はもちろん、「受講者が現場に戻った後にどこでつまずくか」「どうすれば学んだことを成果に変えられるか」を熟知しています。
CareSTA(ケアスタ)がサポートできること
- 研修受講のサポート: 誰を受講させるべきか?受講前に準備すべきことは?といったアドバイス。
- 補助金申請支援: 「デジタル中核人材要件」を含めた、複雑な補助金申請のサポート。
- 現場定着の伴走: 研修で描いた計画を、絵に描いた餅にせず、現場に落とし込むための実地サポート。
「補助金のために研修を受けさせたいが、誰を指名すればいいかわからない」 「研修を受けた職員を孤立させず、組織全体を変えたい」
そのようにお考えの施設長様、まずは当社にご相談ください。制度の表も裏も知る私たちが、貴施設のDXを成功へ導きます。
ご相談はオンラインはもちろん、対面での訪問サポートも可能です。『まずはオンラインで話を聞きたい』『現場の状況を直接見てほしい』など、貴施設のご要望に合わせて柔軟に対応いたします。
DX医療介護ナビ 編集部
関連記事



















