新しく「介護テクノロジー利用の重点分野」 介護ロボットの重点分野と定義が改定へ
目次
厚生労働省及び経済産業省は、介護ロボットやICT等のテクノロジーを活用した介護サービスの質の向上、職員の負担軽減、高齢者等の自立支援を推進するため、2012年から策定・改訂されてきた「ロボット技術の介護利用における重点分野」を大きく改定し、名称を「介護テクノロジー利用の重点分野」に変更しました。
この改定は、ICT・IoT技術の進展や介護現場の新たな社会課題に対応するために行われました。
重点分野の改定内容
新たに追加された分野
次の3分野が新たに追加されました。
これらは、介護テクノロジーの重点分野とは別で、2024年度の介護報酬改定でも加算等や新設等の変更があったものでもあります。
つまり、今後日本がテクノロジーを用いて介護における様々な分野の効率化やデータ取得を目指していく姿勢がよく見えます。
介護報酬における事業を行っている事業者はこの点については見逃せませんのでキャッチアップが必要でしょう。
具体的に関連する介護報酬改定の内容については記事後半に記します。
今回追加された介護テクノロジーの重点分野は下記3分野です。
- 機能訓練支援
- 食事・栄養管理支援
- 認知症生活支援・認知症ケア支援
機能訓練支援
目的:
高齢者等の生活機能の維持・向上、要介護度の維持・改善
対象:
介護職等が行う身体機能や生活機能の訓練における業務
主な機能:
アセスメント、計画作成、訓練実施の一連の業務を支援。介護サービスの質の向上と職員の負担軽減を図る
食事・栄養管理支援
対象:
高齢者等の食事・栄養管理に関する周辺業務
主な機能:
・誤嚥検知
誤嚥発生や誤嚥リスクの検知、介護従事者等への通知、情報・データの蓄積
・栄養管理支援
食事摂取内容等の把握、高齢者等の特有の課題(低栄養等)の把握、情報・データの蓄積
認知症生活支援・認知症ケア支援
対象:
認知機能が低下した高齢者等の自立した日常生活または個別ケア
主な機能:
・日常生活支援
認知機能低下による生活のしづらさの解消、高齢者等が操作しやすい工夫、介助者への情報共有、日常生活の自立性向上支援
・個別ケア支援
認知機能、生活環境、表情等の情報収集・蓄積、個々の特性に合わせた介護サービス提供支援、介護サービスの質向上と職員の負担軽減
定義文の見直しを行った既存分野
従来からある下記分野には定義文の見直しが行われました。
新たに追加された3分野と同様、2024年度の介護報酬改定で打ち出された方針と同様の方針が反映されています。
具体的に関連する介護報酬改定の内容については後半に記します。
- 移乗支援(装着)
- 移乗支援(非装着)
- 排泄支援(排泄予測・検知)
- 見守り・コミュニケーション(施設)
- 見守り・コミュニケーション(在宅)
- 見守り・コミュニケーション(コミュニケーション)
- 入浴支援
- 介護業務支援
変更点全体図
全体的には次のような傾向となっています。
- データ利活用の強化:多くの分野で、介護記録システムやケアプラン作成支援ソフト、科学的介護情報システム(LIFE)等との連携が加点評価項目として追加されました。
- 多職種連携の重視:収集された情報が多職種に共有され、個々の特性に合わせた介護サービス提供を支援することが可能な場合、加点評価されるようになりました。
- 自立支援・社会参加の促進:特に新規追加分野では、高齢者等の自立支援や社会参加を促進する機能が重視されています。
- 業務効率化と質の向上の両立:介護サービスの質の向上と職員の負担軽減を同時に実現する機器・システムが求められるようになりました。
介護テクノロジー関連メーカーはこれらを考慮して開発を行うことで、介護テクノロジー機器としての価値を高め、結果として介護現場を強力に支援することができるようになります。
2024年度介護報酬との関連
本改訂は2024年度の介護報酬改定と合わせて見ると国の方針が良く見えます。
例えば下記のような2024年度の介護報酬改定の加算拡充や新設内容と連動していると思われます。
- 科学的介護推進体制加算(LIFE加算)加算の拡充
- 生産性向上推進体制加算(テクノロジー導入等)新設
- 夜間人員配置基準緩和の見直し
- 認知症専門ケア加算の見直し
- 認知症チームケア推進加算の新設
- 栄養マネジメント強化加算の拡充
- 機能訓練加算の見直し
- 自立支援促進加算の拡充
- 口腔衛生管理体制加算の見直し など
これらの加算や見直しは、新たに追加された介護テクノロジー利用の重点分野と密接に関連しており、介護サービスの質の向上、職員の負担軽減、高齢者の自立支援を目指すものと考えられます。
お役立ち情報
今後、日本において介護保険による事業を行っている事業所は日本の介護が向かっていく方向性を見定め、介護テクノロジーの重点分野にもキャッチアップしていく必要があるでしょう。
また、このような重点分野に関しては補助金や自治体のサポートがあることがほとんどです。
例えば各都道府県に介護生産性向上総合相談センター(自治体により名称は若干異なります)が設置されています。
詳しくはこちらの記事を参照。
また、各都道府県には介護テクノロジーに関する補助金も出ています。
介護テクノロジー導入支援事業補助金を徹底解説!令和6年度(2024年度)
介護テクノロジーにかかる費用の1/2~大きいところでは4/5まで支援してくれる補助金ですので活用しない手はありません。
また、補助金の対象として、教育、研修、伴走支援にかかる費用も含まれる点は見過ごせません。
介護テクノロジー製品を購入しても定着しないという施設が半数以上あるとされているためスタッフ教育や伴走支援は不可欠なのです。
当社は介護テクノロジーの導入のための研修、セミナー、伴走支援、さらには補助金申請サポートも行っておりますので、ご興味があればこちらからお問合せをいただければと思います。
DX医療介護ナビ 編集部
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